近年、日本企業で働く人は、グローバル化による事業の海外展開や生産ラインの移転のため、一般職、技術職を問わず誰でも海外勤務することがあたりまえとなっています。その中で、職場要因や生活環境の変化によって、海外赴任中の駐在員が心身に不調を訴えたり、業務上でトラブルを起こすなど、海外事業の展開に影響を及ぼすリスクも増加しているのが現状です。


企業にとって、海外駐在員のメンタルヘルス対策をしっかり行うことは、海外での事業活動に大きな影響を与えるといえます。

ment04

 

-- 海外駐在員の6割以上が赴任中にストレスを感じています --

海外駐在員のメンタルヘルスについて、「海外赴任中にストレスを感じた」とした人は62.2%と半数以上に上ります。

 

その原因は....

    「言葉の壁・コミュニケーションのとりにくさ」

    「文化・価値観・考え方の違い」

    「生活環境の変化・生活習慣の違い」

 

また、会社や上司からの支援については、現地の仕事や生活環境に適応するための役立つ支援を「受けていない」とした人が6割を超えています。海外駐在員を送り出す企業が十分に支援できていないのも原因の一つとなっているようです。 

 

海外駐在員のメンタルヘルス不調は、軽度から重篤まで幅広く、疾病ではうつ病や自殺を考えることが多くなるとされています。その要因は、業務プレッシャー、駐在員の若年化、コミュニティ不足などがあげられており、日本との環境の違いも加わりストレスがたまりやすい傾向にあります。

 

また、帯同する家族も海外生活に不安を抱えることもあるため、そのことが駐在員自身のストレスとなるケースも増加しています。

 

-- 地域によりストレス要因は異なります --
 

外務省の「海外在留邦人数調査統計平成26年要約版」によると、2013年の在留邦人数は1258,263人(前年比 8,686人増)で、同調査を開始した1968年以降過去最高となっています。そのうち、民間企業関係者の長期滞在者は452,517人で、近年ではタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナム、インドなどアジア地域の増加が目立っています。

 

日系企業の拠点数をみると、少なくとも63,777拠点(前年比 2,989拠点増)で、こちらも同調査開始した2005年以降過去最多となった。国別では、中国(約50%)、米国(約11%)、インド(約3.9%)、タイ(約2.5%)、ドイツ(約2.5%)、以下アジア地域のインドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、台湾と続き、日系企業の全拠点のうち約70%がアジアに集中しています。

 

アジアといっても国によって宗教も異なり、食事や生活習慣は大きく異なる。また日本と比べ交通事情が不便なことが多く、自由に動けないなどもストレス要因となるようです。

 

海外駐在員を送り出す企業は、メンタルヘルス対策において、これらの地域性を考えた対策も必要かもしれません。
 

beach

 

-- 早期発見・早期治療が決めて --

海外赴任や新しい職場環境のストレスに対する反応が、多くの方が感じられる以上に強く現われ、仕事上、家庭内の生活が著しく障害された状態を適応障害といいます。その背景には、海外であることや言葉の壁など様々な要因から周囲のサポートが得られにくい状況、本人の精神的な弱点、環境と本人の適応力のミスマッチなどが関与していると考えられています。

早期に適切な対処および治療を受ければ、多くの方は回復すると考えられています。しかしながら、適応障害が遷延化してしまう方、適応障害からうつ病など他の精神障害に発展してしまう方もいます。

 

ストレスを強く感じたら、ストレス状況を回避する前に、できるだけ早期にメンタルケアを受けることが可能な医療機関に受診したり、周囲に相談・支援を求めたり、その状況に早く適応できる環境を整えていくことが重要です。