イオン・マレーシアは傘下のドラッグストア「イオン・ウエルネス」で、医師や看護師が常駐する店内クリニックを開業する。地場クリニックチェーン最大手クォリタス・グループと業務提携した。スランゴール州のチュラスセラタン店で8月8日、初めての店内クリニックが営業を開始する。クリニック併設型ドラッグストアは、マレーシアで初めての例となる。

 

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イオン・ウエルネスのチュラスセラタン店は、イオン・チュラスセラタン・ショッピングセンター(SC)内に立地。店舗面積は、同社の平均的な店舗面積である250平方メートル弱を上回る420平方メートルで、クリニックはそのうち106平方メートルとなる。

 

■イボ除去の小手術や血液検査も

 

クリニックでは、医師、看護師、薬剤師、栄養士が常駐する総合診療科を設置し、医師は診察や予防接種から、イボやホクロの除去などの小手術までを手掛ける。また、医師の診療や投薬のみではカバーできない分野については、薬剤師が採血や血液検査、血圧や体重測定、心疾患リスクの判定などをもとに、薬物治療や生活改善指導を行うなどのサービスを提供するという。

 

イオン・ウエルネスは現在、首都圏やマラッカ、ジョホール、ペナン州などを含むマレー半島部で45店舗を展開している。マレーシアには国民皆保険制度がない。また、マレーシア保健省のデータによると、医療施設数は人口10万人当たり約7施設と非常に少なく、受診にも時間がかかるのが実情だ。その一方で、一定の分野では医師による処方箋がなくても薬剤師の判断で薬や処方できることから、薬剤師の役割は日本と比した場合にも大きいという。

 

イオン・ウエルネスはこうした状況を受け、これまでにも、薬剤師がいる調剤薬局を既存の12店舗に併設してきた。同業の香港系ドラッグストア「ワトソンズ」や「ガーディアン」にもこうした調剤薬局併設店はあるが、医師や看護師がいるクリニックを備えたサービスは展開していない。イオン・ウエルネスは、SC内で365日営業するドラッグストアでの買い物に合わせ、気軽に短い待ち時間で利用できるクリニックを設けることで、顧客の利便性を向上でき、付加価値にもなると判断した。

 

■店舗はバリアフリー対応

 

イオン・ウエルネス・チュラスセラタン店の従業員数は、医師、薬剤師合わせて12人。診療の待ち時間や終了後に、薬剤師や栄養士による助言を受けてサプリメントや衛生用品など、必要な商品をすぐに買い求められるようにするという。品ぞろえでは、オーガニック食品やシャンプー、スキンケアグッズ、アレルギー特定原材料を含まない食品、自然食品などを充実した「オーガニック&ナチュラルコーナー」を展開する。また、高齢者や身体に障害を持つ顧客が最短距離でクリニックに入れるよう、駐車場側にスロープ付きの入り口を設け、クリニック専用の駐車場を整備するなどの対応も行っている。

 

イオン本社の広報担当者は、チュラスセラタン店での状況を見た上で、今後の拡大などを検討することになるが、第2号店の開設時期などは未定だとしている。

NNA 2016/07/26