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【共同】マレーシア北西部ペナン島が「医療ツーリズム」先進地として人気を集めている。高い医療水準や他国と比べて低いコストが魅力で、海辺のリゾートや英統治下の歴史的街並みといった観光資源も豊富。治療や診察などのために外国から渡航する人が年々増えている。

 

世界遺産に指定された島の中心地ジョージタウン。海沿いの静かな高級住宅地にある総合病院「アイランドホスピタル」の清潔感あるロビーには、キャリーバッグを引く人々が行き交う。マラッカ海峡の対岸のインドネシアから訪れた人々だ。

 

同じイスラム圏の同国からは日帰りの来訪者も多い。首都ジャカルタから皮膚科の受診に来た中国系の大学生アナスタシアさん(22)は「きょうは母語の福建語で医師と話せた」と顔をほころばせた。同行の親族7人と1週間ほど滞在し観光や買い物も楽しむという。

 

島では七つの総合病院とペナン州政府、空港が外国人患者の誘致で協力し、2014年にはインドネシアや日本、米国、中国などから約35万人が訪れた。これらの病院で受診者に占める外国人の割合は今や45%に上る。

 

空港には病院利用者専用の無料バスがあり、到着と同時に各病院に直行できる。英語だけでなく、インドネシア語や中国語が通じやすいことも強みで、日本語通訳も常駐。深夜の救急外来にも通訳が駆け付ける。

 

アイランドホスピタルは医師約60人と看護師約600人を含む計約1,100人が勤務。入院可能で「療養中の社長が取締役会を開ける会議室」を併設したベッドもある。

 

日本人利用者の多くは駐在員や長期滞在者という。メーカー勤務の夫と暮らす森山佳代さん(47)は「子どもの発熱でも電話一本で主治医や通訳が来てくれる」と話す。

 

アジアの医療ツーリズム産業ではタイが先を走るが、マレーシア政府も振興に力を入れており、市場は7億リンギ(約196億円)以上に拡大した。その中心がペナン島だ。

 

1996年に同病院を設立したチャン・コクユー顧問(82)は、心臓や呼吸器などの重い疾患にも対応できると話し「マレーシアでは医療の質と低コストが両立できる」と強調した。

 

(ジョージタウン共同=山岡宗広)